「ありゃ、まただよ・・・」
俺は、自分の携帯を見て、がっくりした。
幸せのメール。
なんのこっちゃない、ただのチェーンメールだ。
伝播する手紙
ある少年が、いたずら気分でチェーンメールを改ざんして、送った。 相手は、見ず知らずの人。ただ、インターネットで偶然見ただけの相手。 内容は、幸せのメール。 そこまでは、よくある話。
その翌日、そのメールを送るためだけに作ったフリーアドレスへ、「あ」とだけ、書かれたメールが送られて来た。 「なんだ、こりゃ」 添付されていたテキストに、説明があった。
From: 1***************@***.ne.jp いきなり申し訳ございません。本日から、当社では、チェーンメールとみなされるメールを送られたと、苦情のありましたアドレスに、制裁メールを送らせて頂く事にしました。 今後、このような事のないよう、よろしくお願い致します。 チェーンメール抹殺同盟
制裁メールが、たった一文字。「あ」 少年は鼻で笑った。 が、立て続けに、同じアドレスから制裁メールが届き出した。
一文字ずつ、増えているのだ。
「あな」「あなた」「あなたは」「あなたはけ」「あなたは警」
少年は気付いた。 あり得ない。 最初の制裁メールは、自分がメールを送った2秒後に送られたことになっている。 そんな短時間で、迷惑メールが来たと、苦情を受けてからメールを送れるだろうか。
そんなことを考えている間にも、メールは増え続けていた。 少年は怖くなり、メールソフトを切った。
だが。
パソコンが自動に立ち上がり、メールソフトを起動して来た。 少年は、おそるおそる、画面を確認した。 ある時間を境に、ぴったりとメールは止まっていた。
From: 1***************@***.ne.jp あなたは警告を無視し、再三にも渡る、謝罪メール送付要求を無視し続けました。大変遺憾ながら、制裁をせざるを得ない、と当社で判断いたしました。 大変残念です。 チェーンメール抹殺同盟
と書かれていた。 「制さ・・・・」 彼の言葉は、これが最後となった。
彼の死体は、翌朝母親に発見された。 頭は床の上に、無表情で転がり、身体はパソコンの前に座った状態だった。
ただ、一本の太い鎖が、頭と身体をつないでいた。
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