「ありゃ、まただよ・・・」

俺は、自分の携帯を見て、がっくりした。
幸せのメール。

なんのこっちゃない、ただのチェーンメールだ。

 

伝播する手紙

ある少年が、いたずら気分でチェーンメールを改ざんして、送った。

相手は、見ず知らずの人。ただ、インターネットで偶然見ただけの相手。

内容は、幸せのメール。
5人の人に送れば、幸せをお裾分け出来ます。
止めちゃうと、まとめて不幸が来ちゃうぞv なメール。

そこまでは、よくある話。

 

その翌日、そのメールを送るためだけに作ったフリーアドレスへ、「あ」とだけ、書かれたメールが送られて来た。

「なんだ、こりゃ」

添付されていたテキストに、説明があった。

 

From: 1***************@***.ne.jp
Subject:警告です。
Date: 200*年7月*日 22:31:*:JST
To:******k@ya***.ne.jp
Return-Path: <1******@***.ne.jp>
Received: from rcpt-*******.ya***.ne.jp by ya***.ne.jp (RCPT_GW) id

いきなり申し訳ございません。本日から、当社では、チェーンメールとみなされるメールを送られたと、苦情のありましたアドレスに、制裁メールを送らせて頂く事にしました。
早急に、送付先に謝罪メールをお入れください。
確認出来るまでは、制裁対象となります。

今後、このような事のないよう、よろしくお願い致します。            チェーンメール抹殺同盟

 

制裁メールが、たった一文字。「あ」

少年は鼻で笑った。

が、立て続けに、同じアドレスから制裁メールが届き出した。

 

一文字ずつ、増えているのだ。

 

「あな」「あなた」「あなたは」「あなたはけ」「あなたは警」

 

少年は気付いた。

あり得ない。

最初の制裁メールは、自分がメールを送った2秒後に送られたことになっている。

そんな短時間で、迷惑メールが来たと、苦情を受けてからメールを送れるだろうか。

 

そんなことを考えている間にも、メールは増え続けていた。
そう、まるで、派生したメール全てに反応するかのように・・・。

少年は怖くなり、メールソフトを切った。

 

だが。

 

パソコンが自動に立ち上がり、メールソフトを起動して来た。

少年は、おそるおそる、画面を確認した。

ある時間を境に、ぴったりとメールは止まっていた。
少年は、ほっとしつつ、最後のメールを確認した。

 

From: 1***************@***.ne.jp
Subject:警告です。
Date: 200*年7月*日 22:31:*:JST
To:******k@ya***.ne.jp
Return-Path: <1******@**t.ne.jp>
Received: from rcpt-*******.ya***.ne.jp by ya***.ne.jp (RCPT_GW) id

あなたは警告を無視し、再三にも渡る、謝罪メール送付要求を無視し続けました。大変遺憾ながら、制裁をせざるを得ない、と当社で判断いたしました。

大変残念です。                         チェーンメール抹殺同盟

 

と書かれていた。

「制さ・・・・」

彼の言葉は、これが最後となった。

 

彼の死体は、翌朝母親に発見された。

頭は床の上に、無表情で転がり、身体はパソコンの前に座った状態だった。

 

ただ、一本の太い鎖が、頭と身体をつないでいた。

 

end


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